歴史的に見て、金と銀の比率(Gold-Silver Ratio)は大きく変動してきました。
古代ローマでは12:1、中世ヨーロッパでは14:1、19世紀のアメリカ合衆国では16:1とされてきました。
しかし、現代ではその比率が約80:1に達しています。
これは非常に異例な状況であり、なぜ銀の価格がこれほどまでに低いのか、多くの人々が疑問に思っています。ここでは、その理由について考察してみたいと思います。
歴史的背景
銀本位制の時代
古代から19世紀にかけて、世界の多くの地域で銀本位制が採用されていました。
銀本位制とは、通貨の価値が銀の量によって裏付けられている制度です。
この制度は、中国をはじめとするアジア地域や、中世ヨーロッパでも広く採用されていました。
特に中国では、明朝から清朝にかけて約500年間、銀が通貨の基準となっていました。
また、ヨーロッパでは、16世紀から19世紀初頭まで、銀が主な貨幣として流通していました。
金本位制の登場
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、多くの国々が金本位制を採用しました。
金本位制とは、通貨の価値が金によって裏付けられている制度です。
これは、金の希少性と価値の安定性が理由でした。
初めて金本位制を法律として制定したのは1816年のイギリスでした。
日本では、1871年に金本位制が導入されました。
この時期、1:15の比率で金と銀が交換されることが多かったのですが、次第に金の方が重要視されるようになりました。
金本位制の崩壊
20世紀初頭の大戦や経済不況の影響で、多くの国々が金本位制を停止しました。
1944年、アメリカ合衆国で行われたブレトン・ウッズ会議で金とドルの交換のみを可能にした金本位制が成立しました。
しかし、ブレトン・ウッズ会議から約20年後の1971年にはこの金本位制も完全に廃止となりました。
アメリカの保有する金の量が著しく減ったために、続けられなくなったのです。
これにより、通貨の価値は政府の信用と経済状況に依存するようになり、金と銀の価格は市場の需給バランスに大きく影響されるようになりました。
現代における銀の価格
現代では、金と銀の価格比率が約80:1に達しています。
これは、歴史的な水準と比較して非常に高い比率です。以下にその理由を考察します。
1. 市場の需給バランス
銀は多くの産業用途で使用されています。電子機器、医療機器、太陽光パネルなど、多岐にわたる分野で消費されており、その量は膨大です。しかし、新しい鉱床の発見や採掘技術の進歩により、供給量もまた増加しています。これにより、需給バランスが取れ、価格の抑制につながっていると考えられます。
2. 投資需要の違い
金は「安全資産」としての地位を確立しており、経済不安やインフレーションの際には多くの投資家が金を購入します。一方で、銀は主に産業用途に使われ、投資需要が金ほど高くありません。このため、価格が抑えられている可能性があります。
3. 政府および中央銀行の影響
多くの国の中央銀行が金を準備資産として保有しているのに対し、銀はそのような扱いを受けていません。金は国際的な通貨システムの一部としての役割も果たしており、この差も価格比率に影響を与えています。
4. 市場操作
一部の専門家は、銀市場が操作されている可能性を指摘しています。特に、銀の先物市場で大規模なポジションを持つ金融機関が価格をコントロールしているとの説もあります。これにより、実際の需給バランス以上に価格が低く抑えられているかもしれません。
5. 戦争と消費
銀は軍事用途にも使用され、特にミサイルなどの精密機器には多く使用されます。ミサイルは一度消費されるとリサイクルが不可能であり、大量の銀が失われます。現在、ウクライナでの戦争やパレスチナの戦争など、世界各地で戦争が続いており、その影響で銀の消費が増加しています。それにもかかわらず、銀の価格が相対的に低いままであるのは、他の市場要因が強く作用しているからです。
結論
いかがでしたでしょうか。金と銀は人類史とは切っても切れない存在ですが、その長い人類史でこれほどまでに銀が安くなったことはないほど現代の銀価格は安くなっています。
市場は単純な需給バランスだけでなく、投資心理、中央銀行の動向、市場操作の可能性など、多くの複雑な要素に影響されます。
このため、銀の価格が相対的に低く抑えられているという現象が生じているのです。
ですが、人類の長い歴史の中での金と銀の比率で考えると、ここ数年の銀の価格は非常に割安な資産であると思います。
今日(2024年6月13日)の金価格は1g /12,937円 対する銀は1g /167円
もし、これまでの歴史の中で最も多く採用されていれた比率の15:1の割合になるとすると、1g /862円になってもおかしくないということですね。
銀に投資してみるのも悪くはないのではないでしょうか。
今回はここまでになります。最後までお読みいただきありがとうございました。