
スムート・ホーリー関税法(Smoot-Hawley Tariff Act)は、1930年にアメリカで制定された関税法です。
目的:アメリカ国内の農業と産業を保護するため、輸入品への関税を大幅に引き上げること。
内容:約20,000品目の輸入品に対し、平均関税率を当時の約40%にまで引き上げた。
しかし、この関税法は逆効果を生みました。
• 各国が報復関税を導入し、国際貿易が急減
• アメリカの輸出も大幅に減少
• 世界的な景気後退が深刻化し、世界恐慌(Great Depression, 1929–1939)を悪化させたとされる
この失敗は「保護貿易が経済を悪化させる」歴史的な例として、今も経済学でよく引用されています。
現在の状況とスムート・ホーリー関税法の類似点
現在、アメリカのトランプ前大統領が提唱する「相互関税」(Reciprocal Tariff)が、スムート・ホーリー関税法と似た影響を及ぼす可能性があると懸念されています。
トランプ関税との類似点
1. 関税率の大幅引き上げ
• スムート・ホーリー関税法 → 平均40%の関税
• トランプ関税(2025) → 最低10%、最大54%の関税を主要貿易国に適用予定
2. 各国の報復措置
• 1930年代 → 欧州諸国、カナダ、日本などが報復関税を導入 → 世界貿易が縮小
• 2025年 → EU、中国、日本が報復関税を検討中(すでにEUは「米国製品に最大30%の追加関税を準備」との報道あり)
3. 世界経済のリスク
• 1930年代 → 世界恐慌の長期化
• 2025年 → 「世界恐慌」再来の懸念(金融市場の不安増大、各国の成長鈍化)
トランプ関税との違い
ただし、当時と現在にはいくつかの違いもあります。
1. 経済の規模と構造
• 1930年代 → 世界貿易はGDPの比較的小さい割合だった
• 2025年 → グローバル化が進み、貿易依存度が高くなっている(貿易の縮小がより深刻な影響を及ぼす可能性)
2. 国際金融システム
• 1930年代 → 金本位制(各国が金に対して通貨を固定)で、金融緩和が難しかった
• 2025年 → 中央銀行が政策金利を調整できるため、緩和策を打てる余地はある
3. デジタル経済
• 1930年代 → ほぼ全ての貿易が物理的なモノ(関税の影響を受けやすい)
• 2025年 → デジタルサービス(ソフトウェア、クラウドなど)が経済の大部分を占めるため、関税の影響が一部限定的
結論
トランプ前大統領の関税政策は、スムート・ホーリー関税法と多くの共通点があり、もし各国の報復合戦が激化すれば、世界貿易の縮小による不況リスクが高まる可能性があります。
ただし、中央銀行の金融政策やデジタル経済の発展など、現代ならではの要素があり、当時ほど直接的に「世界恐慌」に直結するかは不透明です。しかし、「関税競争は経済に悪影響を及ぼす」という歴史の教訓を考えると、今回の動きは要注意と言えます。
今後の注目ポイントとして、
• EU・中国・日本の報復関税の動き
• 米国議会での関税政策の議論
• 金融市場の反応(株価・為替など)
などをチェックすることで、経済の流れをより深く理解できます。
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